Greg Girard

1955年生まれ。カナダ出身でキャリアの大半をアジアで過ごしてきた。社会的・物理的な変化をテーマにしている。1983年~98年まで香港に滞在し、イアン・ランボットとの共著で九龍城を探訪した写真集「City of Darkness」を出版し、話題となる。近年、沖縄にも通い「Hotel Okinawa」を出版。

ステートメント

ホテル・オキナワ 2008-2017 

私が海外の米軍基地の世界を知ったのは、1970年代後半に東京に住んでいた頃、FEN(米軍極東ネットワーク)の放送を聞いていた時である。その後、米第7艦隊の母港である横須賀や、横田基地に隣接する福生など、近隣の町を撮影するようになった。

1982年に初めて沖縄に行き、那覇を中心に過ごした。当時の国際通りは米軍関係のお土産屋さんでいっぱいだった。1980年代後半から1990年代にかけて、私はさまざまな国際誌の取材で沖縄を訪れた。大抵は、米軍基地を抱える負担と、それに対する社会的反応(しばしば抗議行動という形で、今日まで続いている)に関連した記事を書いていた。

沖縄が世界のどこにもない米軍基地を集中的に受け入れているという事実が、どれほどのものであるかを日本国外で想定することは難しい。日本に駐留する5万人の米軍兵士の半数以上が沖縄に駐留しているのだ。沖縄本島では、土地の20%近くが基地で占められている。この大規模な米軍の足跡と、1972年まで沖縄が米国の統治下にあった歴史の遺産は、沖縄の社会的・物理的景観が、他の場所にはない米軍との関係によって形成されていることを意味する。

2017年、私は『Hotel Okinawa』を出版し、この「基地内」と「基地外」のユニークな世界に目を向けた。"分離していながら結合している “というのは、沖縄の人々が何十年にもわたって米軍と密接に関わりながら生活してきた結果なのだ。また、本書には、米軍統治時代の写真、定期刊行物、その他の遺物が随所に登場し、現在の沖縄の複雑な構造の一部となっている歴史の紐帯が記されている。「ホテル・オキナワ」というタイトルは、米国・ワシントンや東京の決定によって、この場所が多かれ少なかれ観光客を「受け入れる」ことを余儀なくされていることへの認識から付けたものである。

フランス・パリ在住のインディペンデントキュレーター、マーク・フューステルは、『ホテル・オキナワ』の序文に、次のように書いている。

「グレッグ・ジラードの写真は、将来がどうなるにせよ、衰退し、時代遅れになった帝国を紛れもなく描き出している。沖縄の気候の容赦なさと、輸入されたアメリカンドリームがもたらした犠牲だけかもしれないが、『Hotel Okinawa』はアメリカの世紀の終わりを示すドキュメントのように感じられる」

ART NAHA / Cross Border プロジェクトについて

沖縄から海外へ、海外から沖縄へ。境界線を越えて「対話」することをテーマに、上映プログラムやインスタレーションなどの作品を展示する。本プロジェクトでは、沖縄の歴史や文化など根底に触れる上映プログラムとこれまでに沖縄との関わりがある海外拠点のアーティストの展示で構成される。